ENGLISH LAB.代表の糸賀です。
TOEICで900点近く取っても、「英語が話せない」「会話になると詰まる」と感じる社会人は少なくありません。
文法も単語も理解しているのに、スピーキングになると口が動かない。
この「TOEIC高得点なのに話せない」状態は、英語上級者によくある壁です。
この壁に直面する理由として、私は、多くの英語上級者(TOEIC850~990点)が「難しい英語を使わないと上級っぽくない」と思い込んでいるからだと、考えています。
でも本当に大切なのは、「通じる英語」を話すこと」です。
そしてそれを見事に体現しているのが、イスラエル出身の歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ(Yuval Noah Harari)です。
最後までぜひご覧ください。
目次
ユヴァル・ノア・ハラリの英語は、英語上級者の理想形
ハラリ氏は『サピエンス全史』『ホモ・デウス』『NEXUS』などの著者であり、世界中で講演を行う歴史学者です(The Guardianインタビュー)。
母語はヘブライ語。つまりノンネイティブ英語話者です。
それにもかかわらず、TEDやWiredなどでのスピーチは世界中で理解されています。
なぜなら、彼の英語は驚くほどシンプルで、かつ、通じる英語だからです。
ハラリが語る「中学英語で伝わる世界」
あくまでほんの一例にすぎませんが、以下は、ハラリ氏のWIREDインタビューからの引用です(出典:WIRED “AI and Humanity” 対談)。
“I’m a historian and I try to understand where humanity is coming from and where we are heading.”
“We are now facing not just a technological crisis but a philosophical crisis.”
日本語訳:
「私は歴史家であり、人類がどこから来て、どこへ向かっているのかを理解しようとしている。」
「私たちは今、単なる技術的危機ではなく、哲学的な危機に直面している。」
ほんの2文のみですが、単語を見るとすべて中学高校英語レベルの語彙、構文も非常にシンプルです。
それでいて内容は「人類の行方」「哲学的危機」という高度なテーマ。
シンプル英語でも、高度な話はできる。
これは、英語上級者のスピーキング上達にとって重要なヒントだと、私は以前から思っています。
TOEIC高得点者がスピーキングで詰まる理由
私は、これまで多くのTOEIC高得点者や英語上級者の方々と一緒に勉強をしてきましたが、「話せない」原因は、 知識が足りないからではなく、英語を複雑にしすぎるからだと考えています。
- 難しい表現を探してしまう
- ネイティブっぽく言おうとして詰まる
- 正確さを優先して沈黙する
その結果、伝わらない英語になります。
しかし、ハラリ氏のように、簡単な英語で的確に話す訓練をすれば、「伝わる英語」が自然と出てくるようになります。
戦略①:ハラリ流「通じる英語」の3原則
ハラリ氏の英語が示すのは、「伝わる英語とは『引き算』である」という真理です。
英語上級者がスピーキングを伸ばすために、次の3原則をぜひ意識してください。
①難語より基本語を使う
→ “try”, “need”, “make”, “think” など、基礎語で構成する。
②1文につき1つのメッセージ
→ 長文を避けて、1文で1主張。リズムを崩さない。
③論理より順序
→ 文法よりも語順の流れを意識する。
例: “I think we need to…” “This is not just about technology, but about people.”
この3原則を徹底するだけでも、スピーキングの上達にとって、大きなプラスになります。
戦略②:日常トレーニング法(ハラリ流を自分の力にする)
「ノンネイティブ英語でも世界に通じる」ハラリ氏のような話し方を身につけるには、ぜひ次のステップで練習してみてください。
ステップ A|素材を選ぶ
題材はなんでも構いません。
英語ニュース、ニュースアプリ、市販教材、YouTubeなど、 自分が興味を持てる英語素材を選びましょう。
最も続けやすいのは、「好きなテーマ」を選ぶことです。
ステップ B|理解と音読・リスニング
まず素材の内容を完全に理解し、音声があれば繰り返しリスニングをします。
シャドーイングも効果的です。
ここでの目的は「語彙、文構造、内容を徹底して入れること」です。
ステップ C|自分の言葉でスピーキング
素材を閉じて、「どんな内容だったか?」を平易な英語で再表現します。
独り言英会話のように、英語で声に出して話してみましょう。
ハラリ氏のように、シンプル英語で「話せる英語」へ変換することが目的です。
この方法なら、忙しい社会人でも毎日10分でスピーキング力を磨けます。
最初のうちは上手くいかないでしょうし、「簡単になんて全然話せない。無理!」と思うこともあるはずです。
ですが、何度上手くいかなくても、数か月ほど続けていけば、TOEIC850~990点を取れる地力を持つ人であれば、徐々にできるようになっていきます。
英語上級者こそ「シンプル英語」を使いこなそう
英語上級者の多くは、すでに膨大な語彙・文法知識を持っています。
だからこそ、これから必要になるのは、「知っている英語」を「使える英語」に変えるトレーニング。
そして、「足す勉強」ではなく「引く練習」です。
難しい表現を覚えるより、知っている英語でどれだけ伝えられるかを試すことが、最速のスピーキング上達法です。
ハラリ氏の英語は、ネイティブではなくても「通じる英語」を体現しています。
“I’m a historian and I try to understand where humanity is coming from and where we are heading.”
“We are facing not just a technological crisis but a philosophical crisis.”
この短い文の中に、とても簡単な単語だけで思想の深みがあります。
ぜひ今日から、「難しい英語を話す練習」をやめて、「シンプルでも伝わる英語を話す練習」に切り替えましょう。
まとめ|TOEIC高得点の知識を「話せる英語」に変える
TOEIC高得点でも話せないのは、才能の問題ではありません。
「伝わる英語」を意識していないだけです。
ハラリ氏のように、シンプル英語を使いこなすノンネイティブを目指せば、 スピーキングは確実に変わります。
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今回紹介した「ハラリ流のシンプル英語」は、TOEIC高得点者や英語上級者にこそ効果的なトレーニング法です。
ENGLISH LAB.では、“話せる英語”を身につけるための実践的な学習法を以下の記事で詳しく紹介しています。
「TOEIC900点以上でも話せない」を突破するその後の勉強法
→TOEIC高得点者が次に取り組むべき“話すための学習法”を詳しく解説。
→ハラリ氏のように、シンプルな語彙で伝える力を鍛える実践メソッド。
英会話上達には独学も必須!英語スピーキング勉強法|中上級者向け
→社会人でも一人でできるスピーキングトレーニングをご紹介。
どの記事も「TOEICで高得点は取れるけど、話すのが苦手…」という方に最適です。
ぜひ、参考になさってください。
日本国内での学習でも、スピーキングは伸びます。
「知っている英語」を「話せる英語」に変えていきましょう。