ENGLISH LAB.代表の糸賀です。
TOEIC900点でも英語を話せないという英語学習者は、実はとても多く、私はこれまでに何百人とお会いしてきました。
TOEIC900点で「話せない」という人の悩みは、普通の英語学習者の悩みとは、種類が異なります。
TOEIC900点を持っているけれども、スピーキング力が不十分だと自分では感じている。しかし、周囲からは英語が堪能だと思われていて、それがプレッシャーになっている。
周囲の期待に応えたいし、スコアに見合うスピーキング能力を身につけたい。でも、何をどう勉強して良いかわからない。
このようなお悩みです。
私は、自分が運営する英語スピーキング強化スクールで、「TOEICは高得点、でも話すのは苦手」というお悩みを持つ生徒さんと、日々スピーキング強化の勉強をしています。
TOEIC900点でも英語を話せない理由、その解決策となる勉強法を、本記事ではご紹介します。ぜひご覧ください。
TOEIC900点でも英語を話せない理由
TOEICがインプットを試す試験であるのに対し、実際の英会話(スピーキング)は、アウトプットを試すものです。
言い換えれば、TOEICは『英語をどれだけ知っているか』を試すテストで、英会話は『その知識をすぐに使えるか』が重要になります。別の力が求められるのです。
ですので、英語の知識は豊富なのでTOEIC900点は取れるが、その知識をすぐには使えない、という人がいても、全く不思議ではありません。これが、TOEIC900点でも、英語を話せない理由になります。
料理の知識が豊富でレシピも覚えているが、実際にすぐに美味しい料理を作るのは難しい、というのに似ています。
TOEICはインプット力が試される試験
TOEICは、英語をどれだけ知っているか(インプット)を試す試験です。「話す」試験は、990点満点のTOEICには含まれません。
たしかに、TOEICにも、スピーキングとライティング(アウトプット)の試験はあります。しかし、現状は990点満点のTOEICと比べると、残念なことに「まったく普及していない」のが実情です。
私の社会人の生徒さんでも、990点満点のTOEICは、すべての人が受験経験をお持ちです。
ですが、TOEICのスピーキング&ライティングテストを受験したことがある、という人は、100人に1人くらいだと思います。
英語学習への感度が高い人たちの間ですら、まったく普及していないのです。
990点満点のTOEICが良くない、と言うつもりは全くありません。そう思ってもいません。
TOEICで高得点を取れることには、間違いなく価値があります。
問題は、TOEICが日本社会に浸透しすぎている、ということの方にあると考えています。
大学受験もTOEICと同じ
TOEICだけでなく、日本の大学受験も、インプットが試される試験です。
大学受験の際、大半の人は、「単語・熟語・文法を覚える→英文解釈→長文読解」という流れで、英語の勉強をしてきたはずです。
私は、大学受験を控えた高校生にも英語を教えているので、受験英語の現状を知っているほうだと思います。
その立場から言わせていただくと、最近の大学受験も、昔と大差ありません。
「大学受験→TOEIC」という流れは、ひたすらインプットを強化する勉強になり、スピーキング力を向上させる機会は、持てないままになります。
読解力は優れている
こうした勉強を続けると、インプットは高いレベルで強化されます。
例えば、TOEIC900点を持っている人であれば、次のような英文の日本語訳を作ることは、とても簡単なはずです。
Sumo is a traditional Japanese wrestling sport where two wrestlers, called rikishi, compete in a circular ring.
The goal is to force the opponent out of the ring or make them touch the ground with anything other than their feet.
Sumo has ancient Shinto roots and includes rituals and ceremonies.
スピーキング力=英語の知識をすぐに使える力
同じ内容を次の単語を見ながら、英語で話してください、というのが、英語のアウトプットです。
相撲
伝統
2人の力士
円形
押し出す
足以外が地面に触れる
神道の影響
儀式や典礼
同じ内容でも、こちらの作業は、TOEIC900点の人でも難しく感じるはずです。
これが英語を話すことの難しさで、インプットに偏った英語学習では対応できません。
常日頃から、英語を話す練習をしておく必要があります。
TOEICだけでは自分で英語を作り出す能力が鍛えられない
TOEICで900点も取れるのであれば、高い水準でインプットの基礎ができているということです。
今後は、英語を話せるようになるため、アウトプットにも重点を置いた学習をする必要があります。
「TOEIC900点以上なのに話せない」を解消する勉強法
「英語を話せるようになる」ことを目標にした、TOEIC900点からの勉強法をご紹介します。
TOEIC900点を持つ英語学習者の多くが、TOEICや大学受験でインプットに偏った勉強をしてきたはずです。
だからといって、今後はアウトプットだけやれば良い、ということでは決してありません。
インプットとアウトプットの機会を確保する
実際の英会話など、アウトプットの機会をもつことは、確かにとても重要です。これは、私もまったく否定しません。
しかし、TOEIC900点というのは、インプット(知っている英語の量)という点から見ても、「基礎ができた」くらいの段階です。今後もインプット強化は、絶対に必要です。
にもかかわらず、ここで英会話(アウトプット)だけの勉強法に走ってしまうと、今度はインプットを鍛えることができなくなってしまいます。
ですので、TOEIC900点以上の一般学習者に最適な、インプットとアウトプットをバランス良く強化するトレーニングにぜひ取り組んでください。
具体的な勉強法については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
TOEIC900点からの、英語を話すための勉強法です。
特徴は、以下のとおりです。
・インプットを強化しながら、アウトプットも強化することができる
・話し相手は要らず、1人でできる
・読解力が優れたTOEIC高得点者向け
通訳者のトレーニングの中から、一般の英語学習者にとって役立つ要素を私が抽出し、最適な形にアレンジした勉強法になります。
この勉強法であれば、アウトプット一辺倒の学習になりません。インプットも同時に鍛えることができます。
実際に、生徒さんにご紹介しているトレーニング法の1つです。こちらのスコアアップ記事も、ぜひご覧ください。
TOEIC900点以上で「英語が話せない」とお悩みの人は、まずは、こちらのような基礎トレーニングを習得することが最重要です。
そして、長期間にわたり、日常的に続けてください。
直訳にこだわらず「言い換えスキル」を高める
TOEIC900点以上の人が、スピーキングを鍛える際、ポイントになるのが言い換えスキルの強化です。
テストとは違い、英会話では直訳だけが正解ではありません。
英会話では、「1つの内容を複数パターンで表現できる人」が、絶対に有利です。
具体例で考えていきましょう。
例えば、「日本は地震が多い国です」という話を、海外の人に英語で説明するとします。
答えは一つではありません。
英作文の参考書などでは、正解は一つかもしれません。
ですが、実際には、多くの正解があります。聞き手に通じれば何でも正解です。
「日本は地震が多い国です」という内容に合致する英語を、瞬時にいくつ作れるか試してみてください。
まず、Japanを主語にします。
- Japan often has earthquakes.
- Japan is a country where earthquakes frequently happen.
- Japan is a place that has lots of earthquakes.
- Japan has many earthquakes.
このくらいは、瞬時に思い浮かぶようにしておきたいところです。
では、主語を変えて、同じ内容を表現できないかを考えてみましょう。主語をEarthquakesにします。
- Earthquakes happen a lot in Japan.
- Earthquakes are frequent in Japan.
- Earthquakes hit Japan often.
動詞や形容詞、副詞を変えれば、さらに多くのパターンが可能です。
今度は、代名詞を主語にします。ほぼ同じ内容ですが、以下のような複数の表現に言い換えることが可能です。
- We often have earthquakes in Japan.
- You often experience earthquakes in Japan.
- We face earthquakes frequently in Japan.
実際に英語を話すときには、相手に通じる英語を瞬時に発することが最重要です。
TOEIC900点を取得するまで、インプットに偏った学習をしてきた英語学習者にとっては、この「瞬時に」がいちばん難しいはずです。
「瞬時に」「多くの」パターンを思い浮かべることができる人が、英会話の場面では有利になります。
「1つの内容を複数パターンで表現する」力を、日頃から鍛えておきましょう。
言い換えスキルについては、こちらの記事でもご紹介しています。ぜひご覧ください。
リアルな英会話をする機会も持つ
上記のような勉強法は、TOEIC900点から英語を話せるようになるための基礎トレーニングとして、おすすめです。
基礎トレは、いつまでも欠かせません。日常レベルで続けます。
しかし、実際に誰かと英語で話す機会をもつことも、忘れてはいけません。
オンライン英会話でも、対面でも、どちらでも結構です。英語を話す機会があるのであれば、積極的に挑戦、参加してください。
日々の基礎トレーニングは大切ですが、やはり実際の英会話で得られる学び(特に何が上手く話せなかったか)は、その後の学習で役に立ちます。
「自己発信ノート」を作る
自分が英語で話したいことについてまとめた、英語での「自己発信ノート」を作ることもおすすめです。
「自己発信ノート」とは、次のような内容をまとめたノートです。
- 実際の英会話の場面でうまく話せなかった内容
- 今後話したい内容
- 頻繁に話す機会がある内容
スマートフォンなどで、いつでもチェックできる場所に保存しておくのが理想です。
発信する内容を、1つや2つ作っただけでは、効果はありません。ですが、これが200、300に積み上がれば、相当な力がつきます。また、いつでも英語で発信できる内容を増やしておくことは、大きなメリットです。
ChatGPTなどを使えば、自己発信ノートは、簡単に作れます。
ぜひ試してみてください。
TOEIC900点からのおすすめ教材
TOEIC900点からは、教材も変えることをおすすめします。
TOEIC対策の教材のような、いかにも作り込まれた教材からは離れるべきです。
実際のコミュニケーションを意識した教材を選んでください。実用性が高く、難易度も上がる教材が理想です。
おすすめの市販教材を、具体的に見ていきましょう。
インタビュー
インタビュー教材は、本当におすすめです。
ENGLISH JOURNAL BOOKのような教材が、インタビュー教材の典型例になります。
複数のインタビューが収録されていて、英語ネイティブの知識人がどのような英語を話しているのかを、聴き、読み、勉強法次第で話す教材に変えることもできます。
実際の英会話だからこそ、文法的なミスや、乱れもあります。
これまでの私の経験上、TOEIC900点以上の英語学習者であれば、まず問題なくインタビューを教材として使うことは可能です。
コミュニケーションでは、「話す」だけでなく、「正確に聞き取る」ことも重要です。
ぜひ、本物の英語を日常教材として使ってください。
ニュース
ニュース教材も、おすすめです。CNN ENGLISH EXPRESSは、おすすめです。
ニュースだけでなく、インタビューも収録されています。
TOEIC900点の英語学習者であっても、これはハイレベルな教材だと、間違いなく感じるはずです。難易度が高く、素晴らしい教材です。
他には、VOAニュースフラッシュもおすすめです。収録されているニュースの数が多く、レベルが高いものばかりです。
TOEIC900点からは、このレベルの教材に取り組んでいきましょう。
スピーキングテストの受験もおすすめ
テストの点数が上がると、モチベーションが上がるタイプの人には、スピーキングテストの受験をおすすめします。
スピーキングテストの中でも、おすすめはVERSANTです。VERSANTスコアを目標の一つにするのが良いでしょう。
TOEIC900点の人であれば、VERSANT60点以上を目指すべきです。TOEIC900点でもVERSANT40点台というケースは、珍しくありません。
TOEIC900点だけでは、「本物の英語力」を持っている証にはなりません。
しかし、TOEIC900点に加え、VERSANT60点以上、欲を言えば65点以上を持っていれば、「本物の英語力」の証明にかなり役立ちます。
VERSANTはインプットに偏った英語学習では、太刀打ちできないテストです。
いまいちVERSANTのレベル感が分からないという方は、こちらの記事をご覧ください。
「TOEIC900点前後のスコアを持っているけれど、話すのは苦手」という生徒さんが、スピーキング学習に取り組んだ記事もご紹介します。
TOEIC900点で、今は英語を話すのが苦手でも、正しい方向性で日々の努力を続けていけば、スピーキングは国内でも伸ばせます。
まとめ
本記事のまとめです。
- TOEICの限界:TOEICはインプットの試験で、スピーキング力(アウトプット)は試されない。「900点でも英語を話せない」ことがあるのは、自然なこと
- スピーキングの必要性:英会話では知識を瞬時に使えることが重要なので、日常的なアウトプット練習が必要
- インプットとアウトプットのバランス:アウトプット一辺倒の学習(英会話だけ、など)にならないよう注意
- 言い換えスキルの重要性:直訳にこだわらず、同じ内容を複数のパターンで表現できる「言い換えスキル」を鍛えることが重要
- ハイレベルな教材の使用:TOEIC900点以上の人には、ニュースやインタビューなど実際の英語を使った教材がおすすめ
- スピーキングテスト:テストが好きな人には、VERSANTのようなスピーキングテストの受験がおすすめ
TOEIC900点をもっているだけでも、本当に素晴らしいことです。
今後は、インプットとアウトプットを、バランス良く伸ばすことを意識してください。
私自身も、TOEICのスコアは高いけれど、英語を話すのは苦手な、典型的な日本の英語学習者でした。
繰り返しになりますが、正しい方法で、日々の努力を続けていけば、スピーキングは国内でも伸ばせます。
本記事でご紹介した勉強法を、ぜひ試してみてください!