ENGLISH LAB.代表の糸賀です。
TOEICで900点近いスコアを持っているのに、「英語が話せない」「喋れない」という悩みを抱える方は、とても多いです。
私は自分のスクールで、日々そういった悩みを持つ社会人の生徒さんと接しています。
そうした立場から言えるのは、TOEICは高いのに喋れないというのは、才能の問題ではなく、「知っている英語」を「使える英語」に変換する練習が不足しているからだということです。
1人でできる効果的なスピーキング練習法は、いくつかありますが、今回はその中の一つ、「逆順トレーニング」をご紹介します。
ぜひご覧ください。
目次
逆順スピーキング練習法とは?
逆順トレーニングとは、「アウトプット→インプット」の順で行う、1人でできるスピーキング練習法です。
多くの人は「スクリプトを読む→意味を確認する→音読・暗記」という順番で勉強します。
それはそれで大切な勉強法ですが、自分の言葉で話す力が育ちません。
逆順スピーキングは、最初に「聞いた音声の内容を、自分の英語でまとめる」という「話す」作業からスタートします。
①誰とも話さなくてOK(完全独学)
②実際の会話に近い緊張感で練習できる
③リスニング力・スピーキング力が同時に鍛えられる
私のスクールでも取り入れているトレーニング法の1つです。
具体的に見ていきましょう。
実践ステップ|使うのはこの3つだけ
必要な教材は、以下の3つのみです。
①英語音声(ニュース・インタビュー・市販教材など)
②英文スクリプト
③日本語訳
以下のとおりに進めてください。
ステップ①:英語音声を聞く(何も見ず)
まず、教材の音声を、スクリプトも訳もまったく見ずに聞きます。
完璧に聞き取れなくてOKです。
聞いても全く分からない、難易度の高すぎる音声では意味がありません。
「ざっくりわかる」くらいの理解ができる音声をお使いください。
ステップ②:自分の英語で要約する
音声がひと通り流れ、止まったら、、聞いた内容を1分程度、自分の英語で話してみてください。
どんな話であったのかを、誰かに説明するつもりで、自分の英語で話してみてください。
完ぺきを目指そうとしないことが重要です。
話の順番がズレても、文法が正しくなくてもかまいません。
とにかく話すことが、まずは重要です。
ステップ③:①②を10回以上繰り返す
①と②のステップを繰り返します。
「1回聞いて、1回話し、終わり」ではなく、同じ音声を何回を聞いて、何度も同じ内容を自分の英語で話してみましょう。
回数を重ねるたびに、少しずつ口が慣れていくはずです。
ですが、同時に、10回くらい①と②のステップを繰り返すと飽きてきますし、話す英語がワンパターンになってきます。
そういう時は、同じ内容をわざと別の言葉や表現に言い換えてみるなど、可能なかぎりワンパターンにならないよう工夫してみてください。
この「言い換え」は、スピーキング強化にとって、非常に重要な考え方ですので、ぜひこちらの記事も参考になさってください。
ステップ④:英文スクリプトと日本語訳を確認
もうこれ以上は上手く話せないという段階まできたら、英文と日本語訳を確認します。
自分が上手く言えなかった部分や、聞き取れなかった部分を確認しましょう。
アウトプットのステップはここまでなのですが、ここでトレーニングを終えないようにしてください。
この後のステップで、原文の英語をしっかりインプットします。
ステップ⑤:音読・シャドーイングで定着
自分が何度も繰り返し音声を聞いて、アウトプットした英語のスクリプトを、すべてインプットします。
英文スクリプトを暗唱できるレベルまで何度も音読やシャドーイングを繰り返します。
細かいことを話せばもう少し長くなりますが、ひとまず以上が、逆順トレーニングの5つのステップになります。
なぜこの練習法が効くのか?
TOEIC高得点者には「知識」がすでにある
初級レベルでこの勉強法を実践しても、あまり効果はないはずです。
そもそも、インプットがない状態で、アウトプットのトレーニングをしても、ほとんど意味はありません。
九九をまったく暗記していないのに、5桁の掛け算や割り算に取り組もうとする行為と同じです。
ですが、高いTOEICスコアが取れるまで勉強した人は、語彙や文法など、インプットの基礎は確実に持っています。
また、リスニング力の点でも、TOEICで高得点を取れる時点で、すでにとても高いと言えます。
足りないのは、「眠っているインプット」を活かす機会です。
自分がすでに持っているインプットを瞬時に引き出すようにするための学習法の1つが、逆順トレーニングです。
自分の言葉で「再構成」する訓練になる
自分の英語で話すことを繰り返すうちに、「眠っているインプット」が「使える表現」に変わっていきます。
TOEICの勉強が典型ですが、インプットだけをずっとやっていても、外国語のアウトプット力は向上しません。
毎日のように、実際に自分の言葉で話すトレーニングが不可欠です。
これまで、TOEICの勉強に長時間費やしてきたことは、決して無駄ではありません。
ぜひ、逆順トレーニングのような学習法を使って、眠っているインプットをアウトプットで使えるよう、活性化してください。
シャドーイングでは足りない?その限界とは活用パターン例
今では英語学習法としてすっかり定着した「シャドーイング」では、なぜスピーキング力の向上には物足りないのでしょうか。
シャドーイングが、スピーキング強化にとって「効果ゼロ」という訳ではありません。
ですが、やはり、「シャドーイングだけでは足りない」というのが、私の意見です。
シャドーイングは「コピー」であって「創造」ではない
シャドーイングは、人が話した音声を「コピー」しているだけであって、「創造」ではありません。
聞こえた音を再現するトレーニングは、確かに役立ちますが、それだけでは「自分の言葉で英文を組み立てる力」は育ちません。
どちらかというと、シャドーイングは「インプット」的な要素が強いトレーニング法だというのが、私の実感です。
「喋れるようになる」には、自分で英語を生み出す練習が不可欠
「逆順スピーキング」は、「音声を聞く→自分の英語でまとめる」というプロセスを経ます。
ですので、嫌でも自分で英語を「創造」しなければならないトレーニングです。
実際の会話の臨場感に近いものだと言えます。
また、単に英会話をして終わる「アウトプット一辺倒」の学習法ではなく、英文スクリプトと日本語訳を確認し、音読とシャドーイングで徹底的にインプットまで行うので、アウトプット&インプットの両方の要素を持つトレーニングです。
アウトプットとインプット、どちらに偏っても不十分なトレーニングになってしまいます。
この点、逆順スピーキングは、どちらも満たしている優れた学習法の1つで、シャドーイングだけでは届かない部分まで届くトレーニングだと言えます。
特にTOEICの点数が高く、スピーキングに困っている学習者には最適です。
TOEIC高得点なのに喋れないのはなぜか?
TOEICはインプットの試験
TOEICは「知っている英語量」を測る試験であり、「いかに英語を知っているか」というインプットを試す試験です。
就職や転職で必要となる990点満点のTOEICでは、話す力(アウトプット)は試されません。
海外赴任であったり、社内で英語が実質的に公用語になっているなど、英語学習の目的が「喋ること」であるならば、TOEICは860点くらいで卒業し、スピーキング強化のトレーニングを本格的に開始することをおすすめします。
「TOEICからの卒業目安」については、こちらの記事をぜひ参考になさってください。
勉強法が「読む・聞く」に偏りすぎている
TOEIC対策で育てた力は、基本的にインプット型です。
その結果、「英語は読めるし、まずまず聞けるのに話せない」状態になります。
TOEICも860点くらいまでは、インプットのための学習として効果的です。
ですが、いつまでもTOEIC高得点だけを目指していては、英語を話すことが目的の学習の場合、逆にそれが弊害になってしまいます
ぜひ、ある段階に達したら、本記事でご紹介しているようなスピーキングのトレーニングを開始してください。
今日からでも始められる|最初の一歩
スピーキングの学習を1人で始めても、途中でやめてしまわないことが重要です。
ですので、スピーキングの学習を始めたばかりの頃は、以下の点を意識して学習を進めてください。
・教材は、1分程度の短めの音声からスタート
・毎日10〜15分の練習でまずはOK
・話せないときは「話せないなりに声に出す」だけで十分
・できなくても気にせず、日々淡々と続ける
最初は、どなたでも言葉が出てこないものです。
ですが、その上手くできない期間を超えないと上達しないことも、事実です。
できなくても気にせず、「こんなものか」と捉え、ぜひ毎日継続してください。
まとめ|TOEICが高くても喋れないのは「方法」の問題
本記事のまとめです。
・TOEICはインプット型のテスト。喋る力は別に鍛える必要がある
・シャドーイングだけでは不十分。自分の言葉で話す練習が必要
・「逆順スピーキング練習法」は、TOEIC高得点者に最適なアウトプット訓練
・英語音声・スクリプト・日本語訳の3点だけで今すぐ始められる
・継続することで、スコアに見合った「話せる英語力」が手に入る
スピーキングの学習は、本記事でご紹介したような基本動詞を使うことを意識して、進めていきましょう!