こんにちは。ENGLISH LAB.代表の糸賀です。
今日は、英検1級スピーキング(=二次試験・面接)対策で多くの受験者がつまずく「模範解答の壁」についてお話しします。
市販の英検1級面接対策本を開くと、模範解答はどれもよくできています。
論理的で、語彙も高度で、文法も完璧。でも、読んだ瞬間こう思いませんか?
「こんなの、スラスラ話せるわけないじゃん…」
実際、それが普通です。
英検1級のスピーキング試験(=面接)は、「話す試験」であって、「暗記を披露する試験」ではありません。
ですが、多くの市販教材は(当然ですが)「理想の解答」を載せていて、とうてい「受験者が話せる英語」は載せていません。
では、市販教材をどう使えば「実際に口から出る英語」に変えられるのか。
その答えが、「言い換えによる再構成トレーニング」です。ぜひご覧ください。
目次
英検1級面接の現実:「こんなの話せるか!」と思うのが当然
英検1級の面接(スピーキング)は、「読む」でも「書く」でもなく、「自分の考えを即興で英語で話す」試験です。
この「即興で話す」という部分こそ、多くの上級学習者がつまずく最大の壁です。
実際、市販の英検1級面接対策本を開くと、どの模範解答も完璧です。
語彙も構文も論理も申し分なく、「英文として美しい」。
でも、読んだ瞬間こう思うはずです。
「いや、これ即興で言える人いる?」
そう感じるのが普通です。
模範解答と現実のスピーキングの間には、大きなギャップがあるのです。
模範解答の例(AIの利点と欠点)
例として、英検1級の面接で実際に出題されそうなテーマを見てみましょう。
Topic:Do the benefits of artificial intelligence outweigh the disadvantages?(人工知能の利点は欠点を上回るか?)
市販教材の模範解答は、たとえばこんな感じです。
I believe that the benefits of artificial intelligence definitely outweigh its disadvantages.
First, AI can significantly enhance productivity in various industries by automating repetitive tasks.
For example, in the medical field, AI helps doctors analyze vast amounts of data and make more accurate diagnoses.
Second, AI contributes to economic growth by creating new business opportunities and technological innovation.
Of course, there are concerns about job losses and privacy issues, but I think these problems can be mitigated through proper regulations and education.
In conclusion, the potential of AI to improve our lives far exceeds its risks, and societies should embrace it with caution and responsibility.
いやぁ、……完璧です。絶対合格です。
模範解答は完璧、でも「即興で話す」のは別問題
ですが、この模範解答をそのまま口に出してスラスラ言える人は、ほぼいません。
もし可能なら、通訳者レベルです。
英検1級の面接で求められているのは、完璧な暗唱ではなく、「即興で伝える力」です。
ここから先では、その「理想と現実のギャップ」を埋めるために、「模範解答を崩して、自分の英語に再構成する」方法を紹介します。
提案したいアプローチ:「難しい英語」を「話せる英語」に変える

私が自分のスクールの生徒さんに必ずお伝えしているのは、「模範解答を覚えるだけでなく、模範解答を“噛み砕く”」ということ、です。
つまり、難しすぎる表現を自分の言葉で言い換えて再構成する、ということです。
先ほどの英文を、シンプルに言い変えてみましょう。
言い換え版(現実的に“話せる英語”)
こちらは、模範解答の内容は100%保持し、語彙を平易化した言い換えです。
I think the good sides of artificial intelligence are much stronger than the bad ones.
First, AI helps many industries work faster and more efficiently.
It can do the same work again and again without getting tired.
This saves people a lot of time and energy.
For example, in the medical area, AI helps doctors in many ways.
It can check a huge amount of data very quickly.
It also helps doctors find problems more accurately.
Because of that, patients can get better treatment.
Second, AI helps the economy grow.
It creates new kinds of jobs and new kinds of technology.
Many companies can use AI to make new services or products.
This brings more business chances and innovation.
Of course, there are some problems, too.
Many people are worried about losing their jobs.
There are also serious privacy concerns.
But I think these problems can be reduced.
Governments should make clear rules.
People also need to learn how to use AI in the right way.
In short, AI has great power to make our lives better.
We just need to use it carefully and responsibly.
模範解答の内容は100%保持し、語彙を平易化した言い換えです。
さらにシンプルなバージョン
この、語彙を平易化した言い換えでも、なお難しければ、以下のような言い換えでも問題ありません。
I think AI is mostly good for us.
It helps people work faster and make fewer mistakes.
For example, in hospitals, AI can check data and help doctors find problems.
Some people worry about losing jobs or privacy, but I think we can control that if we use AI carefully.
So overall, I believe AI brings us more good things than bad ones.
英検1級受験者なら、このくらいの英文は十分口に出せるはずです。
構文は中学レベル、単語も基本語ばかり。それでも内容は同じです。
模範解答の「言い換え」で、内容の深さはそのままに、圧倒的に話しやすくするということです。
英検1級の面接対策にも直結する、言い換えで身につく3つの力

①「沈黙しない力」
英検1級の面接では、「話したいけど、思い浮かばない」単語があっても止まらず、別の言葉で続けられる力が問われます。
たとえば、模範解答に出てくるような
「Economic inequality is becoming a serious issue in many countries today.」
という文を、
「The gap between rich and poor is getting bigger in many countries.」
と言い換えても、意味はしっかり伝わります。
どちらも同じ内容を表していますが、後者の方が語彙も構文もやさしく、口から自然に出せるはずです。
これが、難しい単語を避けても「通じる英語」を話す力です。
②「即興で考える力」
面接官は、「暗記した英語」よりも「自分の考えをその場で言える英語」を評価します。
言い換えトレーニングを繰り返すと、頭の中で、「あ、こう言えない。でもこう言えば通じるな」 と瞬時に判断できるようになります。
③「伝わる英語の感覚」
“academic English”ではなく“communicative English”、つまり、「わかりやすく話す力」が、言い換えトレーニングを通じて身に付きます。
言い換えを通じて、英語の「構文の整理」「視点の転換」「情報の削減」を自然に身につけることができます。
市販教材を“使いこなす”ための正しい方法

多くの受験者は、英検1級スピーキング・面接対策として、市販教材の模範解答をそのまま覚えようとします。
もちろん、完璧な英文を覚えることは、決してわるいことではありません。
ですが、実際の面接でそのまま再現するのは非常に難しく、「使いこなす力」のほうがずっと重要です。
模範解答は「暗記」ではなく「素材」
模範解答をゴールではなく「素材」だと考えます。
そのまま覚えるのではなく、自分の言葉で再構成するための材料として使うのがおすすめです。
難しい語句を簡単に置き換えたり、構文を分けて短くしたりすることで、実際に口から出る英語に変わります。
おすすめの活用ステップ
次のように市販教材を使うのが、おすすめです。
①模範解答を読む(理解する)
②その中で「自分なら言い換えたい部分」に印をつける
③英文を別のバージョンで再構成する
- 難語を基本語に置き換えた版
- 主語・視点を変えた版
- 2文に分けた短文版
④実際に何度も声に出してみて、どのパターンが一番自然に口から出るか確認
こうして、「模範解答」→「自分の英語」に変換していきます。
この練習を積むことで、面接本番で「暗記した英語」ではなく、「自分の英語」が出てくるようになります。
まとめ:模範解答を“崩せる人”が本当に強い

英検1級スピーキング・面接試験で高得点を取る人は、 難しい単語を並べる人ではなく、 複雑な内容をやさしい英語で整理できる人です。
市販教材をそのまま使うのではなく、「言い換えトレーニング」で、模範解答を「話せる英語」に変えることが大切です。
英検1級合格のその先へ
英検1級合格はゴールではなく、「通じる英語を構築できる力」を磨くための新しいスタートラインだと思います。
英検1級合格を目指していたり、合格した英語学習者が次に鍛えるべきなのは、 “難しい英語を使う力”ではなく、“簡単な英語で伝える力”です。
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