「英語を聴いても話の詳細までは聞き取れない」
そんな人は『弱形』の音をうまく聞き取れていない可能性大です。
『弱形』とは何か、そして一覧表も作成しました。ぜひご覧ください。
目次
「リスニングが苦手」の正体は「弱形」が犯人の可能性大
私は都内でビジネスパーソンのための英語スピーキング強化ジム「ENGLISH Lab.」を運営しています。
「TOEICはハイスコアだけど、話すのは苦手、ネイティブの話も聞き取れない」という受講生と日々接していますが、リスニングも同時に強化・訓練しています。
本記事は次のような学習者の方に向けて書いています。
・英語中・上級者(TOEICスコア目安:500点~990点)
・英語を聴いても話の大筋の内容はなんとかわかるが、細かい部分までは聞き取れない人
それでは、見ていきましょう。
リスニング上級者でも聞き取りに苦労する『弱形』とは?
私が主宰するスピーキングジムに通ってくださる方は、TOEIC700点台や800点台の方だけではありません。
900点台、それもほぼTOEIC満点という方々もいらっしゃいます。スピーキング強化がメインですが、リスニング強化メニューもプログラムに含まれています。
そして、数百人の方と1対1で接してきた経験から間違いなく言えるのは、「上級者を含め、すべての日本の英語学習者は『弱形』の聞き取りが非常に苦手である」ということです。
そして、弱形を聴きとれないことがリスニングのさらなる上達を阻んでいます。
TOEIC満点近くの方でも、弱形の聞き取りには非常に苦労されるのをこれまで見てきました。
『弱形』とは?
では、弱形とは何でしょうか?
この弱くなる音のことを「弱形」といい、英語の音声変化の1つです。
いまいちわかりにくいと思うので、具体的な品詞で見ていきましょう。品詞で言えば、以下のものが「弱形」になります。
- 代名詞(your, him, them...)
- 助動詞(will, would, could...)
- 冠詞(a, an, the)
- 前置詞(for, from, of...)
- 接続詞(and, but...)
- 関係詞(who, that...)
要は、「名詞、本動詞、形容詞、副詞」などが文章の「主役」だとすれば、弱形になるのは「脇役」たちです。
会話の中では「名詞、本動詞、形容詞、副詞」などの「主役」たちは、「強く」「はっきりと」「長く」発音されます。
それに対し、「代名詞、助動詞、冠詞」などの「脇役」たちは、「弱く」「速く」「あいまいに」発音されるのです。
つまり「話の大筋の内容は聴きとれるが、細部については聞き取れない」という現象は、主役の単語(名詞・本動詞など)は聞き取れるが、弱形で発音される脇役の単語たちが聞き取れていないということなのです。
学校で習う発音は「強形」で、弱形とは発音が大きく異なる
例えば、代名詞の「your」を見てみましょう。
学校ではどういう発音で習ったか。多くの人は「your」を「ユァー」(あえてカナで書きます)と習ったはずです。
しかし、実際のほとんどの会話では弱形で発音されます。「your」の弱形の発音は「ユァ」または「ャ」程度の「弱く、速く、短い」音です。
発音記号を見るとはっきりと違いがわかります。
学校で習う発音は「弱形」に対して「強形」と呼ばれる発音です。
どの辞書にも「your」の発音は「強形」と「弱形」両方の発音記号が掲載されているはずです。
同じスペルですが発音は大きく異なり、しかも会話での発音はほぼ弱形になります。ここで是非とも押さえておきましょう。
弱形一覧表
代名詞や助動詞、前置詞などが弱形になりやすいと書きましたが、以下、弱形一覧表です。
「この単語も弱形になるのか」と知っておくだけでも役立ちます。ぜひ参考になさってください。
1. me [mi:](強形) ▷[mi](弱形)
1. at [æt] ▷[ət]
助動詞, be動詞
1. am [æm] ▷[əm][m]
2. are [a:r] ▷[ər]
3. is [iz] ▷[z][s]
4. was [wʌz] ▷[wəz]
5. were [wə:r] ▷[wər]
6. be [bi:] ▷[bi]
7. been [bi:n] ▷[bin]
8. have [hæv] ▷[həv][əv][v]
9. has [hæz] ▷[həz][əz][z][s]
10. had [hæd] ▷[həd][əd][d]
11. do [du:] ▷[du][də]
12. does [dʌz] ▷[dəz]
13. can [kæn] ▷[kən][kn]
14. could [kud] ▷[kəd]
15. must [mʌst] ▷[məst][məs]
16. shall [ʃæl] ▷[ʃ[ə]l]
17. should [ʃud] ▷[ʃ(ə)d]
18. will [wil] ▷[l]
19. would [wud] ▷[wəd][əd][d]
冠詞、接続詞、関係詞ほか
1. an [æn] ▷[ən]
2. some [sæm] ▷[s(ə)m]
3. and [ænd] ▷[ənd]
4. but [bʌt] ▷[bət]
5. as [æz] ▷[əz]
6. than [ðæn] ▷[ðən]
7. there [ðɛər] ▷[ðər]
8. who [hu:] ▷[u]
9. that [ðæt] ▷[ðət]
では、この弱形の音を聴きとるためにはどうしたらいいのか。具体的な練習法を見ていきましょう。
弱形を聞き取るための学習法はきわめてシンプル
弱形を正確に聞き取るための学習法は単純です。
自分で弱形を発音できるようになるまで練習する。これが一番の近道です。
具体的な練習ステップ
具体的な学習ステップを1つご紹介します。自分でも弱形の発音ができるまで練習しましょう。
1. 音源付き英文スクリプトを用意する(市販教材で十分です)
2. スクリプトの中の弱形になりやすい品詞(代名詞, 助動詞, 冠詞...)にマーカー等で印をつける
3. 音源を流し、オーバーラッピングする
4. オーバーラッピングの際には、2で印をつけた単語の発音に注意し、徹底的に真似する
オーバーラッピングについては、こちらの記事を参考にしてください。
弱形について書かれたおすすめ本・教材
弱形について書かれた本や教材も最近は増えています。
こちらの本は弱形のみならず音声変化全般について詳しく、そして分かりやすく書かれた教材です。
こういった学校では教えてくれない発音に関する教材を1冊持っておくのも良いでしょう。
また、英語の音声変化のまとめ記事もぜひご覧ください。
『弱形』を制する者がリスニングを制す
こう言っても大げさでないほど、弱形の聞き取りは英語を細部まで聞き取るのに不可欠です。
特に、「聞き取れたいくつかの単語をつなぎ合わせて全体の内容を『推測』『想像』する」スタイルから上の段階に進むためには、弱形の聞き取りに慣れることは非常に重要なポイントです。
弱形の発音を意識して、リスニング力を向上させていきましょう。